2025年3月9日日曜日

GMS.8

先週の講義のトピックは、「Targeted misexpression and gene silencing」。ということで、基本的にはGal4-UASを用いたoverexpressionによるgain-of-function analysisと、RNAiによるtissue-specific loss-of-funtion analysisについて。後半はそのケーススタディとして、P. Léopoldラボから2012年に報告されたDilp8発見の論文を紹介した。この論文は、Gal4-UAS-RNAiがとても効果的に使われていると思う。1st スクリーニングは、rn-Gal4>avl-RNAiをテスターラインとして、発生遅延がレスキューされるUAS-RNAiをスクリーニングしているのだけど、10100ラインから121ラインを同定したとかサラッと書いているのがすごい。著者は3人だけど、ピエールはたぶん実験していないだろうと考えると、2人で10100クロスやったってことなんだろう。でもこのスクリーニングがすごいのは、rn-Gal4>rpl7-RNAiに切り替えて行った121ラインに対する2nd スクリーニングで、当たりが1ラインだけだったこと。狙った未知の仮想遺伝子がゲノムワイドスクリーンで一つだけ当たるっていうのは、仮説もストラテジーもドンピシャだったということよね。こらホンマにスゴイわぁ、と感心しながらこれまた熱く語ってしまった。おまけに、Dilp8の上流でJNKの関与を調べるためにpuc-lacZを使っていて、先週のエンハンサートラップの話と結びついたりもしたので、教材としてはなかなか良かったなと思う。

at home

この週末はちょっと家でゆっくり、と言っても結局講義の準備、ラボのセットアップのための購入品目の選定、そして4月末の一時帰国のための出張申請の準備とかなんとか、ずっとパソコンに向かって作業している。昨日は夕方に少し街へ買い物に出たのだが、ふと立ち寄ったインテリア用品のスーパーで長居して、オフィス用に植物とか衝動買いしてしまった。ちなみに上の写真はそのスーパーのクッション売り場なんだけど、アメリカのこういうところ、すごいなぁと感心する。

2025年3月7日金曜日

Advisor

数日間に渡るマルディグラの喧騒が終わって、昨日から街に平穏な日常が戻ってきた感じ。
今日は午前中にまたファカルティミーティングがあって、学部生に対する単位取得とか進路に関する指導要領について、特に今年度からの変更点などに関してかなり熱い議論がなされていたのだが、はっきり言ってよう分からず、自分は静かに聞いているだけだった。終わったあとに、自分と同じ新任のカナディアン I も、なんや全く分からんかったわって言っていたので、これはアメリカの大学のシステムが特殊でややこしいということなんだろう。一年生がどの授業の単位を取るべきかについては、どうやら高校の時の成績も関係してくるようだし、二年目以降も大学に入ってからの成績と卒業後の進路を考えると、取るべき単位とその順番は一人一人違うので、担任の教員(advisor)が色々と相談に乗ってあげないといけないらしい。毎年数人の学部生のadvisorになるというのはまぁエエとして、そもそも大学の授業なんて自分が取りたいのを取ったらエエんとちゃうのんと思うのだが、ここでは違うようだ。確かに、学部卒業後に医学部とか獣医学部といった専門課程を目指す学生にとって、単位の選択はかなり重要になる。ということで、我々がしっかりと理解しておかないと適切な進路指導できないということになるんだけど、やっぱり、それ先生を頼るの?そんなん学生が自分で調べるべきなんとちゃう?結構過保護よねぇ、とか I と話していた。アメリカの大学は学費が高い分、学生に対するサービスも手厚くするということなんだろうか。他の州立大学もこんな感じなんかな。

2025年3月4日火曜日

GMS.7

今週は、Mardi Gras(この地域のいわゆる謝肉祭)のお祭り期間で月火水は大学も休日、ということで火曜の授業は休講。
先週の講義は「Transposable elements II : Insertional mutagenesis」ということで、前回に引き続いてトランスポゾンの話の後編。前半は、ショウジョウバエでP-elementを使って初めて行われたエンハンサートラップによるゲノムワイドスクリーニングの話。1989年、H. Bellen(WJ Gehring lab)と E. Bier(YN Jan lab)らが、それぞれ P-lArB P-lacW を用いて行ったものであり、Genes & Devにback-to-backで発表されている。これらのP-elementを持っているハエと、3番染色体99BにΔ2-3(stable genomic P-transposase)が載っているハエを掛け合わせてジャンプスタートを作るというスキームはどちらも同じ。これらのスクリーニングから膨大な数のlac-Zリポーターラインが得られており、トランスポゾンのランダムインサーションを用いたスクリーニングが、mutagenesisだけでなくenhancer trapのようなゲノムワイドな解析に非常に有効であることを示したものである。
後半は、enhancer trapのlac-Zリポーターラインを用いた遺伝子発現解析について、実例を挙げながらその仕組みや問題点を説明。あと一応、Sleeping BeautyとPiggyBacの紹介もした。そんな訳で本来は今日、Sleeping Beautyを用いたマウスでのmutagenesisの論文について議論する予定だったのだけど、Mardi Grasで休みというのを忘れていたので、こちらは来週火曜に持ち越し。

2025年2月27日木曜日

Thursday night

今日は朝に講義。そして午後はBiologyの新任教員が集まって、一月からここに来た私と I の疑問にみんなで答えるというミーティングを開催してくれた。学生指導担当、成績評価、物品購入、ラボのリノベーション、スタートアップ資金とか、日々疑問に思っていたことを色々と聞くことができて良かった。大学のオンラインシステム上に膨大な情報があるのだけど、例外とか新しいルールとかもあるし、基本的にこういう細かいことは誰も教えてくれないので、逐一自分で聞くしかないのねという感じ。
最近は、講義のある木曜日が一週間で一番大変な日なので、木曜の夜はちょっとリラックスできる。と言っても今晩は、京大の方のフライルームでまだスクリーニングをしてくれている学部生二人とのオンラインミーティングを予定していたので、それが終わってから鍋を楽しんだ。青ネギをたくさん入れた生姜風味の鶏寄せ鍋。実はここのコンロの火力調節が難しくてゆっくりと煮込んだからか、とても上品で奥深い味になった。

2025年2月22日土曜日

GMS.6

今週の講義のトピックは、「Transposable elements I : Finding of transposon in Maize and Drosophila」。ということで、前半はBarbara McClintockがトウモロコシの粒の色の研究で発見したtransposable element、いわゆるトランスポゾンのお話。このところの講義では毎回、ノーベル賞を受賞した研究について話しているけど、このマクリントックという方はこれまたスゴイ研究者だなと再確認させられた。ゲノムの中で場所を変える遺伝因子という彼女の発見は、当時の遺伝学の常識を覆すものだったこともあり、発表後もかなり長い間周りからは理解されずほとんど無視されていたにも拘らず、自分の学説が正しいことは分かっていたのだという。で、後半はショウジョウバエのトランスポゾン、P elementの発見につながったhybrid dysgenesisのお話と、P elementを用いたgermline transformationの方法について。
これまで自分はトランスポゾンについてあまり詳しく勉強してこなかったけど、ヒトゲノムの40%以上がレトロトランスポゾンとか、よく考えてみるとかなり面白いよねぇ。来週はさらに「Transposable elements II」ということで、引き続きトランスポゾンの話をする予定。

2025年2月18日火曜日

LSU

昨日月曜日は、LSU(Louisiana State University)のDr. SCから招待してもらってセミナーをしてきた。LSUはうちのULとはまた別の州立大学で、隣町のバトンルージュにある。朝から晩までみっちりとスケジュールを組んでくれていたので、朝早くに出て車で高速を1時間ほど走ってLSUに到着。町も大学もLafayetteより一回り大きい感じ。特にBiological Sciencesは、三つの学科から成っていてかなり規模が大きいようだ。夕方に予定されていたセミナーまでの間に、Dr. SCのフライラボを見せてもらったり、大学院生達と一緒にランチを取ったり、7人のファカルティ一人ずつと面談したり。セミナーの後は、Dr. SCと亀仙人みたいなおじいちゃんの研究者と三人で、大学近くのレストランでディナー。話を聞いていると、どうやらこのおじいちゃんはかなりすごい研究者で、業績はさることながら、これまでに幾つものバイオベンチャーを立ち上げていたり、日本の理研でアドバイザーをしていたこともあって、これまで何十回も日本を訪れているらしい。地元のケイジャン料理を食べながら、色々と面白い話を聞かせてもらった。そんな訳で、朝早かったうえに一日中ソーシャライズしてトークもしてかなり疲れたので、そこからまた運転して帰るのはちょっとしんどかったけど、翌朝にまた授業があるので頑張って帰ってきた。
そういえば、LSUのファカルティで日本人の方2人と知り合うことができた。ルイジアナに来る日本人は珍しいということで、お二人ともかなり興味を持たれていた様子。今後色々と教えてもらうことになるかも。

2025年2月15日土曜日

GMS.5

今週の講義のトピックは「Loss-of-function mutagenesis for forward genetics」。ということで、Nüsslein-Volhard & Wieschaus によるいわゆる Heidelberg screen の概要、その遺伝学的な戦略と発生生物学における意義などについて説明。原著やその周辺資料を眺めて、これまた本当にすごい仕事やなぁと改めて感動しながら準備していたのだけど、そのすごさがどれくらい伝わったかな。というのも、このHeidelberg screenから出てきた数々の発見は生物学史においてとてつもなく大きな意義があるのは当然なんだけども、スクリーニングでのターゲットにしたフェノタイプが、幼虫の腹側に生えている細かい毛(denticles:歯状突起)のパターンというなんとも地味でマニアックなものだから、熱く説明しながらもちょっと学生の反応が気になってしまったのでした。

ジャワカレー

日本から持ってきたジャワカレーのルウを使った普通のカレーだけど、やっぱり日本のカレーは美味いね。ということで、最近だいぶ料理も再開し始めている。食材は、肉、野菜、果物はだいたいのものが大きなスーパーで手に入る。まぁやはり魚と加工食品は日本と同じようなものはあまり手に入らないけど、エビや貝のようなシーフードはまぁまぁあるかな。あと、この町に新しくできた結構大きめのアジアンスーパーがあって、調味料とか冷凍食品とか日本のものもそれなりに売っている。
家の方は、昨日ついにソファが届いたので、ダイニングとリビングの空間がだいぶ心地良いものになってきた。ちなみにソファを届けてくれた家具屋は、前日からSMSで配達時間を知らせてくれていて、翌朝の7時から昼前までの間に届く予定とかいうことだったのだけど、さすがに7時ということはないだろうと思っていたら、朝の7時前に「あと2〜3分で到着します!」とかいうメッセージが来た。えぇ⁉︎マジでーとか思っているうちに、本当に7時に大きなトラックが家の前に停まって、二人の作業員が運び込んで組み立ててくれたんだけど、結構びっくりしたな。7時はちょっと早すぎだろう。まぁ良いんだけど。